「砂防(さぼう)」という言葉をご存知でしょうか。
土砂災害から命や暮らしを守るために行われるさまざまな工事や仕事のことを、「砂防(さぼう)」といいます。世界でも「Sabo」と言われ、日本語が世界共通語になっています。
大雨などで山の斜面が崩れたり土石流が発生すると、大切な命が奪われたり家が壊されるなど、甚大な被害が起きます。このような災害を防ぐために砂防事業を行っています。
今回、私たちは、鳥取県伯耆町丸山で砂防事業を行っている「
貯水ダムと砂防ダム
私たちがよく目にするダムは「貯水ダム」と呼ばれ、鳥取県内にも賀祥ダム、菅沢ダム、朝鍋ダムなど数多くあります。
一方、「砂防ダム」
砂防堰堤は、
佐陀川砂防堰堤(えんてい)
今回取材に訪れたのは、伯耆町丸山にある「佐陀川砂防堰堤(えんてい)」。
大山山麓に源があり、米子市内の住宅地や山陰道、
下流域には多数の人家や公共施設、田畑や道路などがあるため、
下流にある家やそこに暮らす人たちに被害が起きないよう、
地図に残る仕事
実際に現場で働いておられるお二人に、お話を伺ってきました。
「自然が相手なので、大変なことはたくさんありますが、地図に残る仕事という事に誇りをもっています。」
そう話してくださったのは、現場代理人の世良剛さん。
主任技術者の谷口 篤史さん。
お二人は、これまで現場での様々な苦労を乗り越えてこられたのだそう。
その中でも印象に残っているのは、平成23年9月、大型の台風12号によるダム被災だといいます。
平成23年 台風12号
平成23年の台風12号では、
雨が降り始めた9月1日から9月4日までの総雨量が大山町大山で
鳥取県内では住家の一部損壊2棟、住家の床上、床下浸水合わせて123棟などの被害が発生しました。
この台風の影響は、伯耆町丸山にある佐陀川中流域にも。
堰堤の後ろ側に土砂や岩がたまっている様子が分かります。
西日本最大規模の佐陀川鋼製スリットダム2基は、土石流を捕捉し下流への被害を食い止めるという大きな貢献を果たしたのです。
しかし、その激しい川の流れにより川床は低下。
この時の現場付近の最大時間雨量は74ミリ。K3の上流にあるK4堰堤も同じく被災しました。(現在は復旧しています。)
もしもこの時、砂防堰堤がなかったら、大量の土砂流が一気に下流へと流れ込み、人、家、道路など、すさまじい破壊力で私たちの町や生命を奪っていたかもしれません。
「砂防堰堤」は、私たちの生活を守る盾となり、自然災害からも守ってくれているのです。
想定外のトラブル
現場で作業をしていると、想定外のトラブルに見舞われることもあるそうです。
ある日の作業中、地面から湧水が湧き、現場は騒然。湧き水の勢いはとても強く、あっという間に膝辺りまで。
その後、ポンプを使用し、佐陀川へと流す作業が行われました。
自然相手の現場では、常にこのような想定外のことが起こることも多いでしょう。
現場代理人の世良剛さんは、台風などが接近すると現場のことが心配になり、休日でも現場へやってくることもあるそうです。
主任技術者の谷口 篤史さんも、同じように台風時には、現場のことが気になるそうです。
高い技術力と知識、経験などにより培われていく判断力。
砂防堰堤の建設は、下流に住む人、家、道路などを守るという、
お話を通じて、お二人が仕事に対して強い使命感を持ち、現場のことを考えておられることが伝わってきました。
砂防堰堤建設現場
自然が相手という事もあり、現場での作業は、大変なことだと思います。しかし、ライフラインを整備し、人々の仕事を陰で支えるとても大切な仕事でもあります。
後世にわたり、これから先も人々の生活を支え自然災害から守り続ける、重要な役割を担った仕事ともいえるでしょう。
「こんな巨大な規模のものをどうやって作るのだろう。」と制作過程が想像できないほど、とても大きな砂防堰堤。
そこにはたくさんの人の存在があり、見えないところで私たちの暮らしを支え、守ってくれているのです。
この記事を通して、土砂災害の恐ろしさから私たちの身を守ってくれる砂防ダム、砂防堰堤の存在、そして使命感を持ちその事業に関わる人たちがいること、土木施設の重要性を知るきっかけになればと思います。
(データ・写真など上記情報は記事作成時点のものです。変更ある場合がありますので参考程度にお願いします。)