[とりまが読書部]又吉直樹「劇場」 笑いと嫌悪感と私

[とりまが読書部]又吉直樹「劇場」 笑いと嫌悪感と私

こんにちは、鳥取マガジンです。

今回は「とりまが読書部」としまして、単純に本を紹介するコーナーです。書店でバイトしていた編集長を中心に、おすすめの本を紹介します。

劇場 又吉直樹

今、ベストセラーになっている又吉直樹さんの「劇場」です。「又吉さんの本って実際のところどうなの?」ってよく聞かれます。結論から言えば、読んでほしい本です。でもそれは(かっこ)付きでお勧めする本でもあります。

著者はご存知又吉直樹さん。お笑いコンビ「ピース」のボケ担当です。「ピース」として、キングオブコント2010準優勝、同年のM-1グランプリ4位。(→wikipedea ピース)という結果を残しています。

2015年に発表した「火花 (文春文庫)」が芥川賞を受賞します。出版された本は200万部を超えるヒットとなりました。Netflixでドラマ化もされています。そして今度は映画化されるようです。2017年11月23日公開予定。監督は板尾創路、脚本は板尾創路と豊田利晃、主演は菅田将暉と桐谷健太のダブル主演となっています。

さてこの本「劇場」です。まず内容紹介です。

演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまでもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。

新潮社HP

すごく良かった。何が良かったかというと、主人公の描き方です。

主人公は劇団員。けして人気があるといえない小さい劇団で脚本、演出などをしています。その主人公がある女性と出会うところから本はスタートします。

この主人公が圧倒的にダメ人間。演劇には多少は真剣に取り組んでいるかもしれないけど、あとは本当にダメ人間。妙なプライドや、恥ずかしさが先に立つ、自己顕示欲と自意識の固まり。自意識過剰というやつです。理屈っぽく、めんどくさいやつ。でもそのダメさ加減が、自分自身のダメさ加減と重なって、胸に響きます。

人間のダメなところを描いていて、それが重く「ズシーン」っと読者に乗っかってきて、どうしようもない悲しい気持ちになります。

そこでちょっと読むスピードが落ちるというか、自分を省みて落ち込む。もう読むのやめようかと思います。でもそれが、絶妙なところでユーモアだったり、ちょっとした笑いの要素がはいっていることで、また読み進みたくなる。

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)」という又吉さんのエッセイで、前作「火花」の感想を元相方に聞いた時に

「おもしろいと思ったけど、みんなが嫌悪感を示すような内容じゃない」

と、言われたと書いてあります。「火花」にはそれほどのインパクトがなかったと言いたいのでしょう。この「劇場」という作品には、その「嫌悪感」を意識して書かれたのかもしれません。嫌悪感で心に爪を残す。それだけだと気持ちの悪い小説になりますが、ギリギリのところでユーモアと客観視で踏みとどまっている。そのバランス感が又吉さんの非凡なところです。

読んでいて明るい気持ちになる作品ではありませんが、自分の内面に向きあう作品であることは間違いありません。ちょっと手をとめて読んでみてください。

途中引用した「夜を乗り越える」もおすすめ。本が読みたくなるようなそんな本です。

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